最近もっとも感銘を受けた書籍である『驚異のストーリープレゼン』の内容について取りあげます。
目次
ストーリーを語ること
人生に起きる悲喜交交を大袈裟にストリー仕立てで語ることが、ストーリーライティングだと思っていた。お涙頂戴の物語りに、波乱万丈物語、どこまでフィクションでどこまでが誇張なのかわからんというような類のものかと。
ところが、この書籍を読んだら、全く話が違っていた。
人生の悲劇は、人生の核心に近くための出来事であり、それこそが人生そのものだということだ。
わたしはこれまで、悲劇はその後の一件落着のための「前振り」だと考えていた。
雨降って地固まるという言葉の通り、喜びの振り幅を増やすためのマイナスの振り幅のようなものだと。
けれど、この書籍に出てくるストーリーの主人公たちは、人生が奈落の底に落ちてしまったかのような喪失こそが、人生の本番かのような語り口なのだ。どこかでそのチャレンジングな出来事を待っていたかのような様子が描かれている。
もし、これがストーリーで語られなければ、詰まらない教訓の羅列になる。
苦しみこそが、その人の真価を表すのだ、という表現に終始するだろう。
ところが、主人公の人生に向かう姿勢こそが、人の心を打ち、各自の心にそれぞれの意味を形成していくのだ。
ストーリーテラーの5分類
この著書によると、ストーリーテリングは次の5つのカテゴリーに分けられる。
心に火をつけてくれるストーリーテラー
アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズのプレゼンテーション、スタンフォード大学でのスピーチ、ペプシからジョン・スカラーを引き抜いたときの逸話は、どれも有名すぎるほど有名だ。
彼ほど、相手の心を動かす言葉を操り、ストーリーに組み込む天才はいない。
アップルの製品と同じように、余分な言葉一切を削ぎ落とした短い言葉で想起させるストーリーが秀逸だ。
何を叶えたいか
スターバックスは、コーヒーを売っているのではなく、サードプレイスの提供がミッションである。
建築家も家を立てるのではなく、幸せな家族のための手助けをしたいのかもしれない。
イタリアンのレストランも美味しい食事の提供ではなく、イタリアの文化を伝えることが目的にもなる。
医療機器の製造メイカーも、人の命を救うことで、幸せな家庭生活を守っている。
この仕事や行為によって、どんな人のどのような幸せに貢献しているかを抽象化して考えることが、人の心に火をつけることになるのだ。
教育するストーリーテラー
データや数字の羅列による説明よりも、もっと人の心に届きやすい伝え方がある。
あのビル・ゲイツでさえ、パフォーマンスで人を驚かせてストーリーを人々の心に残そうとする。
複雑な話は、親近感がわく個人的な話とアナロジーで語る。
アナロジーとは
似たものを並べて語る手法。理解を促進し実感をもって抽象概念がとらえられるようになる。
複雑なものを説明するほどに、アナロジーを使うと効果的に聞く人に自分と関係がある話だと聞き入れてもらえる。
また具体的であればあるほど、人の想像を掻き立てるので理解を得やすい。
シンプルにするストーリーテラー
ローマ教皇フランシスコは、ストリーてリングの基本原則の一つである3点ルールを駆使する。
3という数字は、短期記憶であるワーキングメモリに残る数である。
認知心理学によると「マジカルナンバー7±2」が人の短期記憶の限界だと言われている。10桁の電話番号を区切るのも人の認知の仕組みに沿っているのだ。
日本でも3種の仁義と喩えたり、3匹のこぶたの童話や、3分類というのもあらゆる分野でみる。
人にとっての自然に頭に入る数字3を、文章を構成する上でも外してはならない。
抽象化して具体化する
いったん話を抽象化して、シンプルにしてわかりやすい言葉と具体例に直して再構成するとよい。そのときは小学生でもわかる言葉を使う。
周りを奮起させるストリーテラー
過去の苦闘を語り、成功ストーリーを語ることで、雲の上の人に見えた成功者に親近感を湧くことができる。
親密感はや好意を感じる人からの話は、何倍も人の心に届きやすい。
苦闘には様々なものがあるが、内面を見つめ直していく過程は、広く人の共感を呼ぶ。また過去の教訓が生きてビジョンが生まれたストーリーも、人を鼓舞するものになりやすい。
社会運動を興すストリーテラー
キング牧師の「わたしには夢がある…」のフレーズも有名だ。
これは繰り返して強調する手法が取られている。加えて彼はメタファーが得意で人の心に入り込んだ。
ストーリーテリングで有効なのは、情景を浮かべて他の場所に連れていくような話し方だ。
臨場感をもって語れる世界を体感することで、人はその情景に惹かれて動かされる。
ストーリーで語れ!あなたは何をする人か
過去の出来事から浮かび上がる人物像が今のあなたです。
その表現方法やテクニックの詳細は、本編を熟読されると身につくでしょう。
それ以上に、この著書を読むことで勇気付けられます。未来はどんな困難がきても、それ自体がギフトなのだと。